またこの話か——フアンCEOの「AGI」発言の繰り返し
NvidiaのCEOであるジェンセン・フアンが、またしてもAGI(汎用人工知能)の達成を示唆する発言をした。「またしても」という言葉を使わざるを得ないのは、これが初めてではないからだ。フアン氏はここ数年、様々な場面でAGIの到来を匂わせる発言を繰り返しており、そのたびにAIコミュニティでは一瞬ざわつくものの、すぐに「またか」という空気に変わっていく。今回もその例外ではなかった。
正直に言うと、僕はこの手の発言にもう驚かなくなってきている。エンジニアとして日々AIシステムと向き合っている立場からすると、「AGI達成」という言葉が持つ重みと、現実のモデルが持つ能力との間には、まだ相当な乖離があると感じている。現在の大規模言語モデルは確かに驚異的なことができる。しかし、それがヒトと同等の汎用的な知性を持つかどうかという問いに、自信を持ってYesと答えられるエンジニアはそう多くないはずだ。
そもそも「AGI」の定義が誰も合意していない
この問題の核心は、AGIの定義が業界内でまったく統一されていないという点にある。ある人にとってのAGIは「あらゆるタスクで人間を超える知能」であり、別の人にとっては「特定領域に限定されない汎用的な問題解決能力」に過ぎない。フアン氏が使う「AGI」という言葉も、おそらく後者に近いゆるやかな定義に基づいているのだろう。
OpenAIのサム・アルトマンも、GoogleのDeepMindチームも、それぞれが異なるAGIの定義を持っており、そのゴールポストは都合よく動き続けている。これはAI企業にとって非常に便利な状況だ。定義が曖昧であれば、「達成した」とも「まだだ」とも言える。投資家向けのナラティブとしては機能するかもしれないが、技術的な誠実さという観点からは首をかしげざるを得ない。
Nvidiaにとって本当に重要なのは別の話だ
もちろん、Nvidiaの立場から見れば、AGI言説には明確なビジネス上の意味がある。AGIが近いという雰囲気が市場に漂えば、それを動かすGPUへの需要はさらに高まる。H100やBlackwellアーキテクチャへの爆発的な需要は、まさにこのAI期待値の高騰と切り離せない。フアン氏の発言がどこまで技術的確信に基づき、どこまで市場戦略なのかを見極めるのは難しい。おそらく本人の中でも混在しているのだろう。
個人的に思うのは、AGIという言葉を巡る議論よりも、今目の前にあるAIシステムが現実の問題をどう解決しているかを地道に追いかける方がずっと生産的だということだ。AGI達成の宣言は何度繰り返されてもニュースになるが、その言葉の重さはもはや薄れつつある。次に誰かが「AGI達成」と言ったとき、僕たちはきっとまた同じ反応をするだろう——「で、定義は何ですか?」と。
