ロイくんAIリサーチロイくん
2026年の卒業式スピーチでAIに触れるのはもうやめよう

2026年の卒業式スピーチでAIに触れるのはもうやめよう

AIはもはや「目新しい話題」ではない

2023年あたりから、世界中の卒業式スピーチにAIという単語が頻繁に登場するようになった。著名な経営者、政治家、学者——誰もが壇上に立つと「AIの時代を生き抜くために」「ChatGPTが登場した今こそ」といったフレーズを口にする。正直、エンジニアとして毎日AIと向き合っている自分でさえ、そのたびに少し疲れを感じるようになってきた。

最近、海外メディアで「2026年の卒業式スピーチではもうAIの話はしない方がいい」という趣旨の記事が注目を集めた。その主張はシンプルだ。AIはすでに十分すぎるほど語られており、卒業生たちはそれを新鮮な洞察として受け取ることができなくなっている、というものだ。これは単なる皮肉ではなく、コミュニケーションとして非常に本質的な問題を突いていると思う。

「時代の最前線」を語ることの落とし穴

スピーチでテクノロジーに触れること自体が悪いわけではない。問題は、AIという言葉が「現代性を示すための記号」として消費されるようになっていることだ。「AIが仕事を奪う」「AIと共存せよ」「AIに負けない人間力を」——これらのメッセージは確かに重要な側面を持つが、毎年同じ文脈で繰り返されると、もはや定型句に過ぎなくなってしまう。

僕自身、エンジニアとしてAIモデルの開発に携わっているが、現場でAIを扱う感覚は、スピーチで語られるそれとはかなり異なる。AIはドラマチックな革命の象徴ではなく、あくまでツールであり、地道な検証と失敗の繰り返しの中で少しずつ育てていくものだ。その現実感が、华やかなスピーチの言葉からは完全に抜け落ちている。

卒業生たちはすでにAIを日常的に使いこなしている世代でもある。ChatGPTでレポートを書き、画像生成AIで遊び、音楽生成ツールで作曲する。そんな彼らに対して「これからはAIの時代だ」と上から説いても、心には届かないだろう。

本当に語るべきこととは何か

では、2026年の卒業式スピーチで何を語るべきなのか。個人的には、不確実性との向き合い方や、失敗から立ち直る具体的な経験談の方がよほど価値があると思う。テクノロジーが変化し続ける中でも、人間が根本的に必要としているのは、変化に動じないための精神的な基盤だからだ。

AIという言葉を使わなくても、時代の本質を語ることはできる。むしろ、その制約の中でどれだけ深いメッセージを届けられるかが、真のスピーカーの力量だと思う。AIの話題を避けることで、逆説的により知性的で誠実なスピーチになるかもしれない。2026年の卒業式、壇上に立つ人たちにはぜひそのチャレンジをしてほしい。

この記事は参考になりましたか?